Bar《SPERANZA》~扉の鎖は強く叩いて~


〇登場人物

♀ミシェル:Bar《SPERANZA》のオーナー。いつもカウンターに座ってお客さんを待っている。

♂マルコ:Bar《SPERANZA》のバーテンダー。ミシェルには「マスター」と呼ばれている。実はちょっと…

♂桐谷正明:大手保険会社に14年務める営業部係長。成績は万年最下位で部内ではビリ谷というあだ名で呼ばれている。

♂課長:(兼マルコ)桐谷の直属の上司。桐谷よりも年下である。

♀OL:(兼ミシェル)囁き好きな保険会社のOL


〇役表

【Bar《SPERANZA》~扉の鎖は強く叩いて~】

作:焔屋 稀丹


ミシェル/OL:

マルコ/課長:

桐谷正明:

https://malaynonagurigaki.amebaownd.com/posts/8655102

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ミシ「ここはBar・SPERANZA(スペランツァ)。絶望が希望へと返る、夢のBar。都会の片隅で闇を放つあなたをフクロウが誘(いざな)うわ。」


(翼の音)


ミシ「あら、今日も新しいお客さんを連れてきたの?」


(グラスの中の氷が音を立てる)


――1時間前――


桐谷「はぁ…」


桐谷M「桐谷正明(きりたに まさあき)36歳。保険会社に勤め、はや14年。役職は営業部係長止まり。上司は6つも下の若造。万年営業成績最下位。会社内のあだ名は【ビリ谷係長】。部下にもタメ口で話しかけられる、ダメリーマン。」


桐谷「今日も…さんざんだったなぁ。」


桐谷M「商品を売れないどころか、クレームが発生。課長に呼び出しを食らい、一日事務机の前で会議資料のまとめというヒラの業務を押し付けられ、一日が終了。」


桐谷「今日も、どこかで呑んでから帰るかねぇ…」


桐谷M「ビリ谷係長の一日のシメは常にココ。会社の最寄り駅から少し離れた、人気の無い居酒屋。ここでしっぽりと呑む。」


桐谷「入るぜ~。」


桐谷M「看板も出てなきゃ、豆電球ひとつしか灯ってない立ち飲み屋。店主はずっと据え置きのテレビを見てるしけた爺さん。だが、どうもここが落ち着く。なんだか近しい物を感じてな。」


桐谷「焼酎と砂肝ひとつ。」


桐谷M「定番メニューを頼む。そして重たいジャケットを脱いで品が来るのを…」


桐谷「ん?おい、店主。焼酎と砂肝ひとつ。」



桐谷「店主…」


(寝息)


桐谷「あぁ、ダメだ。寝てやがる。」


桐谷M「仕方ない。起こすのも気が引けるし。今日は別の…」


(翼の音)


桐谷「おぉっ!?え!?」


(フクロウの鳴き声)


桐谷「フクロウ??なんでこんな所に…ん?あぁ!俺の財布!」


(翼の音)


桐谷「待て!!どこに持ってく!ちょっと!!」


――大通りの路地裏――

走ってくる桐谷


桐谷「ハァ…ハァ…やっと追いついたぞ。さっさと返し…」


(財布が落ちる)


桐谷「よぉしよしよし。なんとか取り戻せた。おい!フクロウ!お前な!…あれ?」


フクロウがいなくなってる事に気づく。


桐谷「なんだよ。まったく。とんだ害鳥がいたもんだ。明日、役所に電話して駆除してやる。」


(グラスの中の氷が音を立てる)


桐谷「ん?」


目の前に地下に続く階段がある奥の看板に目をやる


桐谷「バー、スプ、スペ…ん?暗いなぁ、潰れてんのか?」


(翼の音)


桐谷「あ!あの鳥!こん中に逃げやがったな!クソ!」


中に入っていく桐谷

(ドアを開ける)

(ドアの鐘なる)


桐谷「おい!」

マル「いらっしゃいませ…」

桐谷「えっ、うぉっ!?」


きらびやかな店内が広がっている。

カウンターの奥にバーテンダーが一人、席に女性客が一人カウンターに座っている


マル「1名様ですか?」

桐谷「えっ、あぁ、はい。」

マル「カウンターへどうぞ。」

桐谷「…」


桐谷M「なんだよ。やってんのかよ。紛らわしい。あぁ、どうしような。高そうな店入っちまったよぉぁ…。まぁいいか、さっき呑み損なったし。ちょっと飲んで帰ろ。」


カウンターに座る桐谷


マル「ご注文は…」

桐谷「え?あぁ、えっと…。焼酎。」

マル「銘柄は、いかがいたしますか。」

桐谷「銘柄??あっ…」

カウンターの奥に並ぶ酒瓶の種類の豊富さに驚く

桐谷「えぇ…あぁ…。一番安い奴で。」

マル「…」

桐谷「あ!いや、やっぱり…」

マルコ「かしこまりました。」

桐谷「え?お、おぅ…。」


桐谷M「あぁ…合わねぇな、こういう店。さっさと帰ろ。」


ミシ「おじさん♪」

桐谷「え?」

近寄るミシェル

ミシ「なんだか浮かない顔してるじゃない?辛い事でもあった?」


桐谷M「どっひゃぁあ。めちゃくちゃ美人だ。美人が俺に話しかけてる!白人か?綺麗な目だなぁ…。」


ミシ「ん?」

桐谷「えっあぁ、いや。」


桐谷M「いっけねぇ。女の子に話しかけられるなんて久しぶり過ぎてのぼせちまった。」


ミシ「もしよかったら、お話聞こっか♪」

桐谷「は?いや、別に大丈夫です。間に合ってますので。」

ミシ「間に合ってますって何よ~。あ、もしかして彼女がいるの?お邪魔だった?」

桐谷「独り身です。いやっ、関係ないでしょ、あなたには。とにかく話しかけないでもらっていいですか?」

ミシ「んもう、そんな邪険にしなくたっていいのに。あ!んふっ、マスター!」

マル「ご注文で…」

ミシ「うん。スレッジハンマーひとつ。」

マル「かしこまりました。」

桐谷「あ、おい。俺の焼酎はまだ…」

ミシ「もうそこにあるよ…」

桐谷「へっ…」


目の前にワイングラス


桐谷「おっ、いつのまに。ん?なんだこれ。どう見たってカクテルじゃ。おい、俺が頼んだのは…」

マル「麦焼酎・壱岐(いき)グリーンを使ったカクテル、壱岐・サンライズです。」

桐谷「いき…サン?」

ミシ「テキーラ・サンライズのアレンジね。オシャレ♪」

桐谷「サン…ライズ??」

ミシ「朝焼けって意味。グラスの底に沈んだ赤いシロップがオレンジジュースと綺麗なグラデーションを作ってて、朝焼けの空を演出してるの。」

桐谷「ぁあ…。でも、焼酎にオレンジだなんて。自分は別に甘いものが飲みたいわけでは…」

マル「お客様、ご感想はお飲みいただいてから。」

桐谷「あ?なんだよそれ…。」

ミシ「いいから、飲んでみなよ♪マスターが作るカクテルはどれも絶品よ♪」

桐谷「…。まぁ、じゃあ。」


一口飲む桐谷


桐谷「ぅっ。なんだこれ。甘…過ぎない。それどころなんだか…」

マル「壱岐グリーンの深いコクがグレナデンシロップとオレンジジュースの甘味を抑え、繊細な甘さを生み出しています。また、通常のテキーラ・サンライズとは違い、度数も高すぎませんので飲みやすい一品になっているかと。」

桐谷「お、おぅ…。」

ミシ「ね♪美味しいでしょ?」

桐谷「あぁ、はい。焼酎に、こんな飲み方があったとは…」

マル「お口に合いましたでしょうか。」

桐谷「あ、あぁ…。でも、これで一番安いのか?」

マル「…」

ミシ「マスターの粋な計らいってやつよ。おじさん♪」

桐谷「う~ん…。」

マル「お待たせしました。オーナー。」

ミシ「おぉん!グラッツェ~♪」


ミシェルの前にカクテルが置かれる。


桐谷「オーナー?今、あんた、オーナーって…」

ミシ「そうよ、ここは私の店【Bar・SPERANZA】。ようこそ、おじさん♪」

桐谷「…。随分と日本語が堪能ですが。ハーフか何かで…」

ミシ「なに~?私を口説こうとしてる?」

桐谷「い、いや…そんなんじゃ。」


黙って自分のドリンクを飲む桐谷


ミシ「んふ。ゆっくり楽しんでいって。」


桐谷M「ふぅ…。全く、いきなりゴチャゴチャと絡まれて困った。しかし、一番困ったのはこれだな。一番安いって言ったけど、いくらだ?1000円?2000…いや、1万しねぇよな…」


ミシ「50万…。」

桐谷「ブフッ!」

ミシ「あぁん、やだ。カウンター汚さないで?」

マル「お客様、よろしければコチラを…」


ハンカチを差し出すマスター


桐谷「す、すみません…。」

ミシ「大丈夫?」

桐谷「あぁ、はい…。あ、あの、差し支えなければ、このカクテルのお値段って聞いても…」

ミシ「いくらだっけ?」

マル「910円です。…税抜き。」

桐谷「え!?そうなの?…でも、今50万って」

ミシ「あぁ、今日の売り上げよ。頭の中で計算してたの♪」

桐谷「あぁ、なんだ。」

ミシ「なんだかごめんなさいね。これ、良かったら飲む?」

桐谷「え…」


桐谷に自分のカクテルを差し出すミシェル


ミシ「まだ飲んでないし、私のおごりでいいから♪」

桐谷「いやいや、結構です。悪いので…。」

ミシ「私のお酒が飲めないっていうの~?」

桐谷「えっ!?」

ミシ「なんちゃってね、でもね、美味しいんだよ♪飲んで欲しいな♪」

桐谷「では…」


スレッジハンマーを飲む桐谷


桐谷「くぅっ!!」

ミシ「効くでしょ♪」

桐谷「あぁ、結構強いっていうか、一気に目が覚めた感じがする。」

ミシ「そりゃあそうよ、ウォッカにライムを加えただけで度数は高めよ♪」

桐谷「なるほど…」

ミシ「でも、美味しいでしょ♪」

桐谷「あぁ、はい。まぁ。」

ミシ「ちなみにさ、カクテルには、それぞれ言葉があるの。」

桐谷「え?」

ミシ「あーあ、まだ気づかないかなぁ?私の……想い。」

桐谷「一体どういう…」

マル「スレッジハンマーのカクテル言葉。」

桐谷「え?」

マル「心の扉を叩いて。」

桐谷「心の…?」

ミシ「んふふ~。」

桐谷「オーナーさん…」

ミシ「ミシェルよ。そう呼んで?もう、マスターったら、教えちゃうなんてズルイ。」

マル「失礼いたしました。」

ミシ「でも、おじさんには必要な事だと思うの。」

桐谷「自分にですか?」

ミシ「心の扉、ガチガチに閉まったままじゃ、誰も手を差し伸べられないよ?」

桐谷「…」

ミシ「仕事、家庭、人間関係。どれかはわからないけど、おじさん、なにかに頭抱えてるんじゃないかな?」

桐谷「…自分は、ダメなサラリーマンなんです。」

ミシ「…うん、聞かせて。」

桐谷「36にもなって、いまだに係長。同僚は皆、俺よりもずっと上の地位に行っちまった。係長だって、お情けで昇格されただけで、ただのお飾りだ。毎日、年下の課長にあごで使われて…。部下にはタメ口きかれて、会社じゃビリ谷係長なんて呼ばれてる。正直、毎日が苦痛でしか無いよ。」

ミシ「なんで、そうなっちゃったんだろうね。」

桐谷「そりゃ、俺がずっと万年成績最下位だからだよ。営業で獲得したことなんてここ5年無いし…」

ミシ「その前はあったんだ。」

桐谷「あぁ、まぁ若かったからな。それでも他の奴らの方が全然とってたよ。正直言って、営業なんてのは知識よりも若さ。フレッシュな奴の方が勢い任せにいけるから取れるんだよ…。」

ミシ「そんな事は無いと思うわよ?知識だって立派な武器じゃない。」

桐谷「14年間、勉強は怠ってねぇ!保険のプランをそらで説明出来るくらいにマニュアルも頭に叩き込んでるし、本屋がすすめてる営業マンの為の実用書だって読み漁ってきた!なのに、全然取れないんだ。結局な。知識なんてのは付け焼刃でしかないんだよ!」

ミシ「じゃあ、知識豊富なおじさんと、若い部下や上司は、何が違うのかな。本当に若さだけ?もっと他に違うところがあるんじゃないの?」

桐谷「そんな事、言われても…。もう俺には分からないよ。」

ミシ「心。」

桐谷「…え?」

ミシ「知識を蓄えて頭でっかちになっていくに連れて、心の扉が狭まったんじゃないかな?そういう人に対して、誰が心を開いてくれると思う?」

桐谷「…」

ミシ「おじさんの部下や上司、あとお客さんだって、人間なんだから。まずはそこじゃないのかな。」

桐谷「知った風に言うなよ!元々、向いてなかったんだよ!そうだよ。向いてなかった。誰かと心を割って話すなんて。この俺に出来るような代物じゃねぇんだ。こんな会社入った俺が馬鹿だったよ!」

ミシ「おじさん。」

桐谷「あ?」

ミシ「出来てるじゃない。心の扉、開いてる。」

桐谷「えっ…。あ、あぁ、ごめん。俺…つい。」

ミシ「今。心の扉、私に開いてくれてるよ♪それを皆にもしてあげればいいんじゃないかな?んふふ♪」

桐谷「心の扉…。」

ミシ「心の扉を自分から開いてあげれば、相手の心の扉もたたけるんじゃない?」

桐谷「自分から…。」

ミシ「もっと自信を持って♪」

桐谷「そう…だな。そうかもしれないな。」

ミシ「おじさん。」

桐谷「ん?」

ミシ「今、いい顔してるよ♪」

桐谷「いや、これは…。」


(翼の音)


桐谷「ん?あぁ!!お前!」

ミシ「あら、どうしたのグーフォ。」

桐谷「グーフォ?」

ミシ「ん?あぁ、この子の名前。私が飼ってる。」

桐谷「飼ってるって、フクロウをか!?」

ミシ「そうだよ!可愛いでしょ♪」


(フクロウの鳴き声)


桐谷「お、おぅ…」


桐谷M「クソッ。こいつめ。駆除してやろうと思ったのに…」


ミシ「何か言った?」

桐谷「え?あぁ、いやいや!なんでもない!とにかく、いい時間が過ごせたよ!酒もうまかったし…。あ、お会計!」

マル「すでにお済みです。」

桐谷「は?」


(フクロウの鳴き声)

フクロウの足に握りしめられた千円札が見える


桐谷「あぁ!お前…!」

ミシ「器用でしょ♪」

桐谷「いや、まぁ、うん。器用といえば、そうだけど…。」

ミシ「じゃあ、気をつけて帰ってね、おじさん♪」

桐谷「あ、あぁ。世話になったな。」

ミシ「ちなみに、もう一つネタ晴らし。」

桐谷「は?」

ミシ「サンライズのカクテル言葉、熱烈な恋。」

マル「ばぁぁ!!!オーナー!なんで言っちゃうのよぉお!」

桐谷「え…」

ミシ「マスターったら、あなたにゾッコンだったみたいねぇ~♪」

マル「いやん、その、違うの!別に恋してるとかじゃなくて、まぁ、ちょっとイケオジだなぁ~って思っただけで!でもね、でもね!普通に美味しいお酒だったから出しただけであって、そういうつもりは全く…」

桐谷「っぷ。」

ミシ「あら?」

桐谷「はっはっは。ありがとうな。なんだか吹っ切れたよ。」

マル「ぁ…。」

桐谷「しかし、人生で初めて告白されるのが、男とは思わなかったがな。ぷっ。不思議と悪い気はしないかな?」

ミシ「よかったじゃない。マスター♪」

マル「やったわーー!脈アリィイイイ!」

桐谷「また来るよ。じゃあな。」


Barを後にする桐谷

(ドアを開ける)

(ドアの鐘なる)


マル「行っ…ちゃっ…たぁ…。」

ミシ「んふっ。残念?食べられなくて♪」

マル「当り前じゃない!オーナーばっかり食べちゃうんだもん…。」

ミシ「ごめんね、マスター。今日は随分とお腹空いちゃってたからさ♪」

マル「まぁ、別にいいんだけどね。私が最後に食べてからココの所、食べられなかったじゃない?全然譲るわよ。でも、久々の大物だったねぇ。一目見た瞬間、興奮が収まらなかったわ♪ねぇ、おいしかった?」

ミシ「もー、とっても!…でも、ちゃんと食べきれたかな。…私。」

マル「う~ん。相当、抱えてたものね。ココにきてなければあのまま自殺してるレベルよ」

ミシ「そう!それだけは回避できて本当に良かったと思う。だって、日本人(ジャポーネ)ってすーぐ自殺するんだから、食べ損なっちゃうのよね。」

マル「こんな豊かな国に生まれて、ほとんどが大きな希望を持って生まれてくるっていうのにね。本当、不思議な国。」

ミシ「まっ、だからココに来たんだけどね♪食べてあげるだけで幸せになれちゃうんだから。良い事してるみたいじゃない?」

マル「実際、良い事してるわよ。」

ミシ「…でも、食べられるのは現在(いま)抱えてる物だけ。」

マル「それも一度きり。」

ミシ「その後、どちらに転んでいくかは、あなた次第。」


(フクロウの鳴き声)


ミシ「あら、グーフォ。そんなにあのおじさんが心配なの?」

マル「んふふっ。お客様に幸あらんことを。」


(翼の音)


ミシ「頑張ってね。おじさん…」


――翌日、保険会社営業部――

出社する桐谷


桐谷「おはようございます。」

課長「おい、桐谷!昨日、お前が営業に行った松下さんの件は…」

桐谷「今朝、謝罪にお伺い致しました!しかし、保険の内容には大変関心があったらしく、その場でご契約もいただけました。」

課長「え、あ、おぉ…。え!?契約!?」

桐谷「ご家族三人、保険三種をご契約頂きました。」

課長「三種ぅ!?嘘を吐くな!そんなものこれまで…」

桐谷「嘘ではありません。ここに契約書も…」

課長「…」


囁き合うOL


OL「(小声)うそぉ…。ビリ谷係長、保険3種3件だって。成績一気にトップなんじゃないの?」

課長「全部、本当だ…。本当に、これを桐谷がか?」

桐谷「はい、松下様には商品の価値を十分に御理解頂いた上、ご契約頂きました。」

課長「…」

桐谷「心を割って話せば、お客様もついてきますので!」

桐谷「皆さん!昨日はご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした!」

課長「桐谷…。皆!本日、桐谷係長がガン・医療・死亡保険の三種を三件獲得しました。。拍手!」


拍手喝采が社内で巻き起きる


課長「桐谷…いや、桐谷先輩。変わりましたね。」

桐谷「へへっ、どうだかね。」


――夜――


桐谷M「こんなに気分のいい日があっただろうか。これも全て、あのBarのおかげかな。ふふっ。礼、言わなきゃな。よし、今日は違う酒でも飲んでみようかな。えぇっと、あぁ!ここだ。」


(ドアを開ける音)


桐谷「また、来たぞ~。…って、え!?」


もぬけの殻となっているBarに驚愕する。


桐谷「た、たしか!ここだったよな!…。間違いない。そんな、一日でつぶれるなんてそんなこと…。マスター!ミシェルオーナー!おい!!誰もいねぇのか!おーい!」



(翼の音)


――エンディング――


ミシ「ここはBar・SPERANZA。絶望が希望へと返る、夢のBar。」


マル「憑き物のように取りついた負の感情が大好物の食いしん坊二人」


ミシ「絶望、食べて」


マル「希望をあなたに返しましょう。」


ミシ「都会の片隅で闇を放つあなたをフクロウが誘うわ。」


(翼の音)


ミシ「あら、今日も新しいお客さんを連れてきたの?」

ミシ「さて、今日はどんなお客さん(絶望)かしら♪」


(グラスの中の氷が音を立てる)


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焔屋稀丹

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